先日、全国展開している某クリニックの分院で、腹部脂肪吸引手術を受けた70歳の女性が手術後2日で死亡するという事件がおきました。
司法解剖では、腸管に穴が見つかっており、手術ミスにより脂肪吸引用の管が腸管に刺さり、それが原因で死亡したのではないかと調べが進められているそうです。本当に悲しい事件であり、手術を受けられた患者様には謹んで御冥福を御祈り申し上げると共に、この患者様の死を絶対に無駄にしてはいけないと強く思っております。
この事件を私なりに整理しますといくつか納得いかない点があります。
(1)通常、70歳という高齢の患者様は少なからず持病があり、その病に対して薬を内服している事が多いので、脂肪吸引手術における合併症の確率が高まるため、一般的に手術を勧めないのが普通である。
(2)高齢者は、麻酔に対するリスクも高いので、同じく一般的には手術を勧めないのが普通である。
(3)腹部の脂肪吸引手術を正しく行うためには、通常4~5時間の時間を要するが、この患者様の手術は1時間という極めて短い時間で手術が終了している。又、麻酔も局所麻酔のみで行われており、術後の回復時間もわずか1時間しか取っておらず、帰宅させられている。
(4)術後の痛みに耐え切れずに、又、同時に黒い血のようなものを吐いており、クリニックに電話で相談をしたが、親身に対応してくれなかった。(黒い血を吐くという事は、腸管から出血しているという事です。)
(5)この一件でニュース等に、患者様の名前、顔写真、年齢、住所まで露出してしまい、プライバシーが全く無くなった。
(6)今回たまたまこの事件がメディアに報道されたが、美容外科業界では、私の知りうる限りでもこのようなケース(死亡事故、高度障害を負ったなど)は数十件ある。
(7)常日頃から、キャンペーンで激安を謳ったり、手術に対してお手軽感を出すなど患者集客を徹底的に行っており、お世辞にも元々レベルの高いクリニックとは言えない。
などである。
今回の事件の争点は、医療事故によるものなのか、或いは、それ以外の原因によるものかです。ここで私が思うことは、医療 " ミス " という言葉と、医療 " 事故 " という言葉を分けて考えなければいけないのではないかという事です。
医療ミスだとすれば、担当医の技術不足、経験不足、不注意により、手術時に腸管に管を刺した事になるわけです。医療事故であれば、しっかり手術を行っていたのに予期せぬ事態が起きたという事になるわけです。私は、正しい脂肪吸引手術の技術を持ち合わせていれば、腸管に管を刺す事は有り得ないと思います。
だからと言って、私は自分自身が医療事故を起こすことは100%無いと言っているのではありません。外科系の医師であれば、" 明日は我が身 " というつもりで手術に臨んでいると思います。手術を受けられる患者様を驚かすためにそのような事を言っているのではありません。
" 人間の体 " に外科的に手を加えるという事は、一般の外科手術でも、美容外科の手術でも、麻酔をかける、外科的侵襲を加えるなど多大なるリスクがあるからです。
医師というものは、そのようなリスクを最大限に回避しながら、日々緊張感を持って患者様の手術に臨んでいるのです!!
しかしながら、この事件が医師の過失によるものだとすれば、それは医療 " 事故 " ではなく、医療 " ミス " であり、許される行為ではありません。
今回の事件に対して、とある美容外科の院長が自身のホームページやブログの中で、以下のように書いていますが、あまりにも胡散臭い内容なので御紹介致します。なお、プライバシーがあるので、少し文章をアレンジしています。
『某クリニックで脂肪吸引による死亡事故が起きました。私どもクリニックは、脂肪吸引を多数行っておりますが、この様な事態に陥ったことは1回もございません。どうぞ安心して御来院下さい。今後も医療事故を起こさず、最高レベルの手術をします。』というものです。
これを書いている医師は、本当に " 医師 " なのか?と疑いたくなります。あなたは神様ですか?と言いたいのです。事故を起こしたくて起こしている医師はいないのです。まして、今まで一度も事故が起きなかったとしても、いつ起きるか分からないのが " 事故 " なのです!!
まぁ、最もそのブログを書いているクリニックは " ボッタクリ " " 適当な手術 " で有名なクリニックで、当院に御来院される他院修正相談の方の中でも、このクリニックの被害者の方はかなり多い位ですから、腹を立ててもしょうがないのですが。
当クリニックでは、今後とも、より一層手術における安全管理を徹底し、技術の向上に努め、全ての患者様の手術に対して責任を持って対応させて頂く所存です。
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